橈尺骨成長板障害(とうしゃっこつせいちょうばんしょうがい)
橈尺骨成長板障害(とうしゃっこつせいちょうばん障害)とは?
前足を構成する骨には上腕骨や橈骨、尺骨などがあり、これらは成長期に太く・長く伸長します。
骨が縦方向へ伸長するとき、骨の両端にある「成長板」と呼ばれる場所を基点として骨が作られていきます。橈尺骨成長板障害では、橈骨または尺骨の「成長板」へなんらかの障害が加わり、正常な骨の伸長が起こらなかった結果、橈骨と尺骨の成長が不均衡となります。
(「成長板」自体は他の骨にもありますが、成長板障害が起こる頻度が最も高いのは橈骨・尺骨なので今回は橈尺骨に限定して記載します)
橈尺骨成長板障害はいくつかの症候群に分類されますが、ここでは臨床現場で比較的よく見られる代表的なものをいくつかあげておきます。
Short Ulna Syndrome
以下にあるように遺伝的に軟骨の形成異常をもっている犬種に発症します。これは外傷がないにもか かわらず、尺骨の成長板が成長期の途中で閉鎖してしまい、それ以上伸長しなくなります。 その結果、前足が外側に湾曲してしまいます。
- ミニチュア・ダックス
- ウェルシュ・コーギー
- バセット・ハウンド
- ・・・etc
橈骨または尺骨遠位成長板早期閉鎖
主に、外傷による成長板の損傷です。高所から飛び降りたり、交通事故などにより成長板を含んだ 橈骨・尺骨の骨折が原因で起こります。
尺骨遠位の軟骨芯遺残:主に大型犬で、徐々に前足の外反変形を起こします。
手根関節緩み症候群:キャバリアに散見され、手根関節の亜脱臼に伴い橈骨の変形をきたします。
これらはいずれも成長期でおこることから、約1 歳齢未満の若齢の犬でみられるのが一般的です。
(犬種によって成長期が異なるため一概にはいえません)
飼い主さんが気付く異変(臨床症状)
- 前足が湾曲してきた
- 前足を挙げたままで痛そうに歩く
- 肘を曲げたときにジョリジョリと変な音がする
成長板損傷時の平均年齢は4 ヶ月とされていますが、実際は損傷後1 ~ 2 ヶ月たってから、湾曲などの異常を理由に来院することの方が多いみたいです。そのほか、二次的な変形性関節症を生じた老齢の犬が来院することもあります。
診断と治療法
上記臨床症状に加えて、身体検査、レントゲン検査などにより診断します。
治療法は内科的治療法と外科的治療法がありますが、歩行や触診時に痛みが生じたり、肘関節の亜脱臼や橈尺骨の変形が進行している場合は外科的治療をお勧めしています。(内科的治療では改善傾向がみられるかどうかは予測不能であり、可能な限り外科的に骨の整復をすべきだと考えています。)
外科的治療としては、各病態によって多岐にわたりますが、その症例の状態に合わせて選択し ます。治療指針を立てるうえで重要となる病態と代表的な手術法を以下にあげておきます。
留意すべき病態
- 障害のある成長板の特定
- 骨変形の方向と程度
- 関節の可動域と痛みの有無
- 成長板損傷時の年齢
- 犬種
手術法
- 尺骨骨切り・骨切除
- 一期的橈骨延長
- 一期的変形矯正・固定
- 創外固定による持続的変形矯正・延長etc