前十字靭帯断裂①(関節外法)
ヨークシャー・テリア
朝は問題なかったが、仕事から帰ってきたら、
後ろ足を挙げたまま痛そうに歩くということで来院しました。
身体検査を実施したところ、左膝の前十字靭帯の部分断裂を起こしている疑いがありました。



レントゲン写真では特に異常はありませんでした。
一般的に単純レントゲン検査では、前十字靭帯の診断は困難な場合がほとんどですが、靭帯断裂によって二次的に発生した関節炎や関節液の貯留、靭帯断裂に伴う剥離骨折の有無、腓腹筋の後方変位などを確認できることがあります。これらの所見があれば、身体所見を含め、総合的に診断できることがあります。
今回は飼い主さんの説明やさらなる身体検査によって前十字靭帯断裂と診断するに至り近日手術をすることになりました。


今回の症例は、関節内制動術の内、「Over the top 法」と関節外制動術の内「人工靭帯を用いた関節外制動術」を実施しました。 左の写真は大腿筋膜を紐状に切り出し、トリミングしているところです。Over the top 法はこの筋膜紐を、切れた前十字靭帯の代替靭帯として利用する手術法です。


写真上では小さくて確認できませんが、関節内に残った、前十字靭帯を取り除いたところです。部分断裂または完全断裂、いずれにせよ、靭帯は伸びきっていたり、脆くなっていたりと、靭帯としての機能は果たさないばかりか、そのまま放置しておくと関節炎の原因となりますので、きれいに取り除きます。


この写真は人工靭帯の変わりに非吸収性の縫合糸(緑色の紐)を用いて再建を行っているところです。




約5日間の入院ののち、退院しました。退院時の歩行はまだ手術した方の足をかばった歩き方をしていましたが、徐々に改善がみられました。この手術は切れた靭帯の再建をではなく、変性性関節症の進行を遅らせる目的なので、膝への負担が軽くなるように体重の管理をお願いしました。